北陸新幹線で問題になっている「並行在来線特急」の問題について考えてみる(問題提起)

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北陸新幹線開業で話題を呼ぶ在来線特急の存廃について

開業まで残り一か月を切った北陸新幹線金沢~敦賀間。

関東の方々は新規に開業する北陸新幹線で福井・敦賀などの地域にスムーズにアクセスできるようになり、JR東日本も「あっという間に福井!」を題材にしたCMを放映しています。

一方で関西圏からは北陸新幹線開業に伴い、並行する在来線特急が廃止になってしまうため、敦賀駅での乗り換えの手間が生じるようになりました。

また、2つの列車を乗り継ぐということで特急料金も跳ね上がります。しかしながら、これらの「乗り換えの手間と料金の跳ね上げ」という負の条件に対して、新幹線の強みである所要時間短縮の効果がかなり薄いという声がSNS等を中心に広がりを見せています。

その声は沿線住民からも発せられており、福井市やあわら市などの北陸本線沿線の方々が「特急列車を存続させるように国に働きかけてほしい」という陳情を福井県議会に提出しました。

新幹線開業はうれしいニュースである一方で、並行する在来線特急がすべて廃止になってしまうため、これらの対応がどうなるのか、という点で近年注目を集めています。

さて、そんな問題を抱える北陸新幹線ですが

「じゃあ新幹線が開業したら並行する在来線の特急列車はすべて廃止になるのか」言われると

答えはノー

新幹線と並行する路線でも、在来線特急が設定されている例は多数見かけます

新幹線と並行している特急列車の例

例えば、東海道線を走る特急(サフィール)踊り子。東京から熱海を経由して伊豆半島方面へ向かう特急列車ですが、このうち東京~熱海間は東海道新幹線と並行しています。(現在はJR東日本と東海という別会社が経営してますが、もとを辿れば同じ国鉄でした。)

しかしながら、踊り子号は東京駅から出ていますし、何なら速さがウリの新幹線に対抗して「安さと豪華なサービス」で真っ正面から喧嘩を売ってます

また関西圏でも京都~姫路(上郡)間を走行する特急スーパーはくとなどのように、新幹線とぴったり並走する同一会社の在来線特急も存在しています。(ってか相生の臨時停車なくなるのね知らんっかった)

ここまで書くと「東京や大阪からは直通の需要があるから並行してても走らせるんだろう」という声も上がるかと思いますが、実はこういった大都市圏以外でも並行在来線特急が運行されている場所があります。

それが、新潟から長岡を経由して上越妙高までを結ぶ特急「しらゆき」です

もともと特急「北越」が担当していた金沢~新潟県内の輸送を北陸新幹線開業に合わせて移管したものになりますが、上越新幹線と並行する新潟~長岡間についても、並行在来線特急として現在でも存続しています。

ほかにも、博多~小倉間で並走する特急「ソニック」や、博多~新鳥栖間で並走する「リレーかもめ」・「みどり」・「ハウステンボス」などなど、新幹線に並行する特急列車はいくつもの種類が存在します。

消える北陸特急と、残る新潟特急

この違いは何なのでしょうか

並行在来線特急の存廃の違いは ~新幹線の歴史から紐解く~

結論から述べると、それぞれの新幹線の開業時期の違いが存廃を大きく変えていました。

新幹線とは、その名前の通り「新しい」幹線、という意味になります。

幹線というのは、東海道線や北陸本線など、都市間を結ぶ路線のことを指しています。

このうち新幹線の本来の目的は「パンク寸前の幹線の機能を一部移管して、ついでに回転率を上げるために高速運転を実施する」という方針の下で開発されたものになります。

簡単に言うと、今のままだと線路が足りないから線路を追加して運転させる、いわゆる複々線化計画。それと合わせて大幅な速度向上で車両の運用をスムーズにしたのが新幹線というわけなのです。

ではこの並行在来線問題が出てきたのはいつ頃なのでしょうか。少し時計を1970年代に巻き戻してみましょう。

国鉄時代のお話

1964年、東海道新幹線開業当時のJR線は、国が出資する鉄道会社「国鉄」でした

民間の企業とは異なり、国営という営業の下で運行していたので、都市間にある小さな需要を拾うことは、多少の赤字がかかっても必要な仕事とされました。

良い言い方をすれば細かい需要を見捨てない、悪く言うと取捨選択ができないという状況でした。

さて、東海道新幹線開業後の成功を見た日本政府は、これを全国に敷設しようという考えに至りました。そこで1970年に「全国新幹線鉄道整備法」を制定し、新幹線を日本各地へ広げる計画を法律という名の下で公表しました。

そんな国鉄のもとで誕生した各新幹線。

・東海道新幹線(東京~新大阪間)

・山陽新幹線(新大阪~博多間)

・東北新幹線(上野~盛岡間)

・上越新幹線(大宮~新潟間)

これらに並行する在来線は、すべて国鉄の考えに倣い、「新幹線=在来線の線路増設」という扱いでしたので、並行する区間でも同じ国鉄が管轄することになりました。(関西圏で例えると、JR京都線・神戸線の外側線と内側線が別会社で運行されているのはどうよ?という話なわけで…)

現在でも、上越国境などのような目に見えて赤字出してるだろう路線も、この考えからJRが管轄しています。

さて、そんな新幹線開業後ですが、走行区間全線が丸被りする特急列車は役割を新幹線に移行、1日1往復などのような需要の低かった特急も区間短縮等を行い、在来線に余裕を出した一方で、一部ルートが新幹線と被っているものの、需要が高く1日に何本もの特急が走行していて、終着点に新幹線が通っていない特急列車は存続するようになりました。

例を挙げると、以下のような特急があります

  • 特急北越(新潟~金沢間:うち新潟~長岡間で上越新幹線と並行)
  • 特急つばさ(上野~山形~秋田間:うち上野~福島間で東北新幹線と並行)
  • 特急にちりん(博多~大分~宮崎間:うち博多~小倉間で山陽新幹線と並行)

このように、新幹線開業後でも一定の需要が認められれば、在来線特急も存続する、というのが国鉄の考えでした。

流れが変わったのが1987年、先述した国鉄の「取捨選択ができない」という考えが裏目に出てしまい、老朽化や新線開業などの設備投資に巨額の資金が発生し、それに関連する負債が蓄積。さらに労使紛争でストライキが幾度となく発生し、そのたびに信用が落ちてしまった国鉄は、ついにその負債に耐え切れず経営破綻。経営立て直しのために、国鉄を地域間で分割民営化することになりました。

時代はJRへ、そして整備新幹線の整備へ

こうして生まれたのが、皆様ご存じJRグループです。

さて、この民営化は日本の鉄道史を大きく変えた転換点でもありますが、同時に新たな問題を生み出すことにもなりました。

国鉄時代は多少の赤字を伴っても存続させていた並行在来線ですが、新幹線が開業するとそちらに人が流れるため、需要が急激に低下していました。

一方でJRは民間企業ですので、赤字額を出さないようにする必要があります。新幹線開業の建設費は大きな負担になる一方で、並行する在来線も存続させると2重で赤字を生み出すことになってしまいますので、JRとしては現有設備を活用したほうが得策です。

しかしながら日本政府としては、全幹法が存在する手前、一刻も早く全国に新幹線を整備させたい、という板挟みな状況になってしまいました。

そこで制定されたのが「整備新幹線」というもの。構想自体は国鉄の財源が悪化した1973年から計画されていたものの、民間会社になったJRからこの整備新幹線構想は具体化が進んでいきます。

この整備新幹線とはどういうものかというと、簡潔に言えば国鉄の予算を使って整備していた新幹線の建設費のうち、2/3を国が、残りの1/3を県や地方自治体が出資して、JRはその線路の貸付料を支払うという制度になっています。

また、1990年12月24日に、整備新幹線開業後は旅客流動が新幹線に移行するため、並行在来線の利用客が減少し収益に影響を与えることから、JR側と地元自治体との合意を得ることができれば経営分離を可能とすることが国会で承認されました(#新幹線とは)。

この決定を受け、1997年に開業した長野新幹線では、並行する信越本線軽井沢~篠ノ井間をしなの鉄道として経営分離し、元来特急街道だった新幹線開業前から収益も高くなく勾配もきつかった横川~軽井沢間はバス転換。一方で高崎~横川間および篠ノ井~長野間については新幹線開業後も黒字経営が見込めたことかとから、JR線として存続させることになりました。

こうして誕生したのが並行在来線の経営移管です。

当初は並行在来線特急は新幹線開業区間と同じか、1日1往復程度で需要の低かったものばかりなので、さして問題にはなりませんでした。金沢や直江津まで1本で行けなくなったという声もあるかもですが、当時は夜行急行能登や寝台特急北陸があったうえ、上越新幹線連絡のかがやきなどの設定が行われており、速達面では特急白山はすでに圧倒的な劣勢に立たされていましたので、あまり問題にはならなかったと思われます。

とはいえ、特急白山自体がかなりな迷特急でしたので、こちらについては要望等があれば単体の記事としてまとめてみます。

露呈する並行在来線問題

さて、この並行在来線特急の問題ですが、この問題が大きく露呈したが、2004年に開業した九州新幹線。

新八代~鹿児島中央間の先行開業に伴い、八代~川内間は並行在来線として経営を分離し肥薩おれんじ鉄道が開業しました。一方で、同区間を経由し運転を行っていた特急「つばめ」は、走行ルートが新幹線と被る新八代~西鹿児島間で運行を終了することになり、博多~新八代間の運行に変更されました。

そのためこれまで1本の列車で行けていた博多~鹿児島間では乗り換えを挟むようになり、さらにその2本の列車は別々の特急という扱いなので、1本分の特急料金で済んでいたものが2本分に膨れ上がり、料金面で大きな問題が生じました。

消費税の増税や車両性能等で、単純な比較はできなかったのですが、あくまで目安として1989年当時と新幹線開業後の2004年、ついでに新幹線全通後の2024年現在の博多~鹿児島中央(西鹿児島)間の所要時間と指定席特急料金についてまとめてみました。以下の通りです。

博多~鹿児島中央(西鹿児島)間

1989年2004年2023年
特急料金(指定席)2500円4060円5030円
所要時間4時間8分2時間10分1時間16分

2004年の開業時に特急料金が約1500円も一気に跳ね上がったものの、所要時間については驚異の2時間短縮を実現しました。

もとが高規格な北陸本線と、海沿いのカーブだらけの区間を抜ける鹿児島本線を比較するのは野暮かもしれませんが…

今回の北陸新幹線問題と同じ問題は、先んじて九州で発生していたのですが、新幹線とこれまでの在来線特急を同一ホームで乗り換えできるようにして、乗り換えにかかる時間を短縮してます。

その後、この乗り換えの問題は2011年に九州新幹線が博多まで延伸したことにより終了。在来線時代と比較しても博多~鹿児島中央間は約3時間もの短縮に成功しました。

一方で、博多延伸後の並行する在来線については「一定の収益が確保できる」としてJR側が引き続き存続させる判断を下しました。

この事例のように、並行在来線を引き続きJR側が運行する判断を下した場合の特急列車の扱いについてですが、九州新幹線の場合は「通勤通学の需要と、早朝深夜の移動」のために特急有明として残存することになりました。

また、博多~新鳥栖間を並走する特急「かもめ」・「みどり」・「ハウステンボス」の各列車については、そもそも乗り換えで使うと不便になるうえに博多まで直通させたほうがほかの列車との乗り継ぎに便利になるので、引き続き博多まで走行させています。

改めて北陸新幹線と並行在来線を見つめなおす

費用と時間で、改めて見直す

さて、今回北陸新幹線開業に際して問題になっているこの「並行在来線問題」ですが、改めて大阪~福井間、大阪~金沢間、大阪~富山間、大阪~和倉温泉間の各区間の特急料金を、2004年(北陸新幹線開業前兼JR西日本がアクロバットダイヤを組んでいた時代)、2023年(北陸新幹線金沢止まりの時代)、2024年(問題となっている敦賀延伸時)の特急料金と所要時間(最速(たぶん))を比較してみましょう。

大阪~富山間

20042023(現在)2024
特急料金(指定席)3030円3870円4570円
所要時間3時間8分3時間6分2時間37分
なんだかんだ今回の改正で首都圏の次くらいに得する場所?

大阪~金沢間

20042023(現在)2024
特急料金(指定席)2820円2950円4570円
所要時間2時間27分2時間31分2時間9分

大阪~福井間

20042023(現在)2024
特急料金(指定席)2610円2730円3880円
所要時間1時間45分1時間47分1時間44分
北陸新幹線の時刻欄に到着時間が書いていないため、出発時刻1分前着で計算

大阪~和倉温泉間

20042023(現在)2024
特急料金(指定席)3030円3370円6060円
所要時間3時間26分3時間38分3時間19分
2023年現在、最速は直通のサンダーバード17号ではなく、サンダーバード9号と能登かがり火3号の乗継
JR時刻表2004年8月号、JTB時刻表2023年3月号および2024年3月号

福井県の時短効果問題について

北陸新幹線開業後の時短3分に対して、特急料金が1000円以上値上げすると問題になっていましたが、過去の時刻表を開いてみると2004年比で短縮効果は僅か1分でした

もう一度言います

時短効果は1分でした

秒数考えるとほぼ効果ないでしょこんなもん。こりゃ確かに福井県民もブチ切れるうえにJRに対して存続を求めますわ。

まぁあくまで余裕時分を確保したうえで安全な運転を行えるという前提がないがしろになっているのは考え物ですが、確かにこれは福井県民の皆様に同乗してしまいますね。

七尾線の利便性低下問題

さらにもう一つの問題である「七尾線利便性低下」についても、特急料金が約2700円引き上げられるものの時短効果が僅か20分、さらにこれまで乗り換えなしの直通で行けていたものが、乗り換えを2度挟まなくてはならないなど、かなり不便になります。

和倉温泉の観光協会としても「残念でならない」と遺憾の声をあらわにしていました。

和倉温泉方面は地震による被害がかなり大きかったために、大幅な値下げ等に踏み切らない限り、復興支援観光等で加賀温泉や芦原温泉などの新幹線停車駅に昇格するエリアと差をつけられ、大きな打撃が発生する可能性も否定できません。個人的に心配な点はそこです。

直通の特急を残せなかった理由

ここまで書いて気になるのが、福井までの直通特急を残せなかったのかという点です。

もともと、大阪や名古屋から福井・金沢方面へは「フリーゲージトレイン」と呼ばれる、新幹線と在来線の相互直通運転が可能な列車を投入することが計画されていました。しかし、実際に車両を使用した調査の結果、以下のような問題が露呈しました。

  • 台車周りが複雑、また摩耗部品が多いため、維持管理費が高くつく
  • 軌間幅変更にかかる所要時間が長く、時短効果が薄い
  • 車両重量が重いため、軌道に負荷がかかり、保線費が高くつく
  • 騒音や振動が一般の新幹線と比較して大きい

以上の理由につき、フリーゲージトレインは運行が難しいという判断が下されました。

一方で、乗り換えなしで来れると思っていた福井県にとって、この決定はまさに寝耳に水。県議会では満場一致で福井県への直通特急存続をJRや国へ請願を行いました。

しかしながら、JR、国ともに存続については難色を示し、2021年の6月に福井県側が折れて特急列車の存続をあきらめるという結論を出しました。

福井県側が折れた理由としては以下のものがあります

  • 存続させた場合、JR西日本と並行在来線側の合算で毎年7億円の赤字を計上する
  • 資本力の低い移管三セクに、車両使用料を支払える体力が残っているのか
  • 主要収入源である貨物からの出資が少なくなる
  • 人員確保等に難がある
  • 大阪~京都間の線路容量の関係で、これ以上の増便が厳しい

これらが理由で、福井県内への在来線特急の乗り入れを残すことはできなくなってしまいました。

とはいえ、上下移動を伴う乗り換えは、高齢化の進む北陸地区にとっては大きな問題ですし、料金の値上げについても難しい点があります。

ではこれらの問題、どのように解決させればよいのでしょうか

次回へ続きますが、一旦ここいらで…

記事が長くなりすぎるとあれですので、今回はここで一旦区切ります。

華々しい新幹線開業ですが、その裏で一筋縄ではいかない大きな問題が起きていることがわかっていただけると幸いです。

関東からは時短効果の高さで経済的に期待されている福井県ですが、大阪からのアクセシビリティの低さで抱える問題点を関東民が勝手に解釈しているだけなので、間違っている点があるかもしれないのでその点はマジで申し訳ありませんでした

さて、次回はこれらの問題点の解決策を考えていきます。

次回をお楽しみに~

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この記事を書いた人

神奈川県在住の鉄オタ
しょーもないようなことに気をかけながら生きています

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